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稽古記録を書きます。
「ダンス公演」と銘打った今回の作品では、当然ダンスと演劇の違いが問題になってくるのですが、顎振りキャリアに関係なくトップの頭が不在のオフィスマウンテンでは答えが準備されていることはもちろんなく、もっか全員で手というより膝下使って暗中模索中といった感じの稽古場です。
しかたなし、前作『能を捨てよ体で生きる』との稽古過程の比較でいうと、メンバーそれぞれが持ち寄ったエピソードをもとに出演者の小川敦子・田中美希恵・山縣太一とオフィスマウンテンの萩庭真の4人がテキストを書いていること、そのテキストの関節を3人が各自で組み換えたものが上演台本?として3パターンあり3人ともが全ての台詞を「発話」すること(俳優が全台詞を覚えることは今作に限りません)、シーンごとに言葉を観客に伝えることの完遂がそこまで重要視されないこと、大谷さんの音楽がテキストと同じ強さのラインとして俳優の外側に存在することなどが今作の特徴としてあると思います。
7月2日です。 先週今週の稽古(公開)では、主に音楽との付き合い方がチャレンジの中心となりました。音楽にのるのではなくそる、音楽があるだけでのっているように見える、俳優が動かず音楽を聴いているときはサントラ感がする、音楽を聴かないことは普通にできる、観客にも聴こえているのだから俳優が音楽を無視するべきではない、というような先週の稽古で出た言葉があり、でも、それらが俳優の意識の中にあるだけではなく身体に現れなきゃだよねというのが今回の流れ。 マイメロ(自分の好きな曲)を内側で歌いながらやってみるという太一さんの提案を受けて、小川さんが天城越えで試す。結果、台詞と歌詞を同時に流すのが難しく、なかなか天城峠を越えられないということがわかり、体歌(鼻歌ではなく)でやってみたりを1回2回と試します。美希恵さんのうなじ、音楽の音量が下がっていって届く速度が遅くなった、スニーカーが床と擦れているところ、あるものがだんだんと見えるようになってきます。繰り返すうちに3人とも身体の具象度が上がってきたのも印象的です。音楽を聴きつつそこにのらないために言葉のラインを強くもつと具象度が増してくる。のか?そもそも、台詞と歌詞では一方がせき止められるかたちで処理されてしまった作業が体歌ならいけるのか(歌詞を追うより身体に当てやすい?)? 同じシーンが違う身体で時間差をもって3回繰り返される今作では、具象さは一つポイントだと思うので、このあたり、残りの稽古で何か詰められれば。
馬場祐之介
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