萩庭マウンテンに山縣太一が書下ろした新作は、うどん屋で働く男とその店に訪れた女の物語。
出演の中野志保実、横田僚平、演出の萩庭真は去年の年末からその台本をもとに稽古を進めてきました。今回、その3人がおこなった鼎談の模様を音声で公開します。
また、鼎談を終えたメンバーから音声を聴かれる方々へのコメントも掲載しています。
稽古後にチャレンジしたかき揚げ作りの様子とあわせてご覧ください~!
鼎談①-1 うどん(演劇)に決まった見方はあるか
・演劇のフィクション性とノンフィクション性
・なぜ観客は技術を知りたがるのか
・演劇をうどんに置き換えよう
・オフィスマウンテンがシングルモルトなら萩庭マウンテンはハイボール
鼎談①-2 オフィスマウンテンとその他の演劇
・2.5次元ミュージカルとオフィスマウンテンの共通点
・まさにシェイクスピアやないかい
・人生を照らし合わせて観られる演劇
鼎談①-3 山縣太一の戯曲の言葉
・俳優にとって至極のテキストか
・横田僚平に起こった変化
・タタミグループとの差
鼎談①-4 言葉と身体
・言葉を取りにいく
・おもしろくなってしまうむずかしさ
・意味に収斂させるのはダサいという風潮
・勝手に踊らされる
中野志保実(出演)
録音した鼎談を聴いて、改めて、考えは日々変化していくものだと思いました。 昨日食べたいと思っていたものが今日はそんなに食べたくないかもしれない、というのと同じように、その都度異なるなぁと。 これから鼎談を聴いてくださる方に誤解を防ぐ為に先に伝えたいのは、俳優は技術を磨いた方が良くて、どの技術を磨いていくか、その技術をどう使うか、あるいは使わないかは自分次第ということと、シェイクスピアは訳によって言葉の使い方が異なることもあり、こう表現するべき、というのはありません。 当たり前のことですが念のため。
お時間あったら、とりあえず身構えず、お茶でも飲みながらのんびり聴いてみてください。
横田僚平(出演)
なんで情熱の反対が恥ずかしい。だったのかについてずっとこの後考えてた。はやくスロースターターの逆になりたい。 舞台上では演じてると思われる俳優へ山縣さんのテキストは具体的に部位の響きを書いて目をそらし。台詞を口にする恥ずかしさから部位の響きを意識する作業への没頭に俳優は寄る。そのサービス精神旺盛なテキストは自身を演出する際の部位のキャラや部位の勢いに変換できる。後押しさがある。部位は役になりきるよりも忠実に自分の状態なので。そもそも登場人物の描写よりも先に構成してるものやから。担保されつつ囲われてる。囲われてるパワーっすごい。でも身体がガチである事でテキストのイタさと拮抗できる。身体がお供えものだとテキストのイタさにヒッパラレて出られない。身体は説得が効くという事を含みすぎた文章。部位で急展開するから物語には響かないけど自分にはバリバリ響きすぎてる。という事に気づく前の稽古段階はテキストに恥ずかしさを覚えて部位に情熱を傾けられていない。ってわかった。このテキストを背負って舞台に立つと恥ずかしいを側に放置した純粋さに会えそう。演じてるを側に放置した事をわかりつつ見られる無垢感。部位に響きすぎてる何やってるの状態。具体性。響きすぎてる状態にできればいいけど。 部位への具体的な影響が書かれてる事を状態や状況としてじゃなく造語として読んでるうちの恥ずかしさだった。
萩庭真(演出)
これは2020年1月20日にBerlin Seminarhouseでおこなった鼎談を録音・編集したものです。音源のいくつかいらないと思われる部分はカットして、4つのパートに区切ってあります。 これらの編集作業はすべて中野さんがしてくれました。 当初、この音声を公開する予定ではなかったのですが、喋らなくなる間や、迷いながら話してて無責任なことをつい口走るみたいなのはリアルでいいんじゃないかという横田さんからの提案でこのような形になりました。
五年前、オフィスマウンテンの旗揚げ公演を一観客としてぼくは観ています。舞台上で大谷さんが大汗をかいていたのが印象的でした。その時はまだ太一さんとも面識はなく、周囲の噂で頭のネジのぶっ飛んだヤバい人なんだろうなくらいに思っていました。 いくつかの巡り合わせでオフィスマウンテンに関わるようになったのは、太一さんが2017年に急な坂スタジオで行った俳優向けのワークショップの手伝いを頼まれたのがきっかけです。そのワークショップには、岡田くんや小川さん、小山くん、甲斐さん、外くんといった今回のフェスに関わっているメンバーも多く参加していました。萩庭マウンテンというユニットを一緒にやろうと太一さんから声をかけてもらったのもその頃だったはずです。 しかし、その後、紆余曲折あり、ぼくはオフィスマウンテンから距離を置いていた時期があります。その頃は小劇場演劇にも興味を失い、いまや演劇は承認欲求の穴埋めかインテリ層の啓蒙の道具でしかないとさえ思っていました。 太一さんから連絡をもらい、オフィスマウンテンのメンバーになるまでの約一年間。演劇を取り巻く環境はますます閉塞的な方へ動いたように感じられます。 それでも、萩庭マウンテンとして山フェスに参加している今なら別の角度から演劇を再定義することはできるかもしれないと考えています。
ある種、偶発的に生まれた今回の鼎談企画でしたが、横田さんいわく、第2弾第3弾と録音していって、前回の反省点も含めて考えを更新した喋りができたらいいかなとのことなので、今後も山フェスの本番までこの鼎談は続けていく予定です。 太一さんからあの時「稽古場おいで」と連絡をもらわなかったら、ぼくは演劇にあのまま愛想つかして、このような鼎談が皆さんの目に耳にふれることもなかったにちがいありません。
かつてSTスポットの客席で「海底で履く靴に紐はない」の初演を観ていた頃のぼくに、山縣太一と萩庭マウンテンというユニットをやることになるよと話してもにわかには信じてもらえないと思います。ただ、ひとつ伝えておきたいのは、その人は頭のネジのぶっ飛んだヤバい人で間違いはなかったということです。
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